選挙に行かない人間を非国民扱いする危険な風潮。有権者には「投票をしない」という権利もある

選挙に行かない人間を非国民扱いすることは非常に危険な風潮です。有権者には「どの政党にも投票をしない」という意志表示をする権利もあるはずです。

ほぼ100%に達したナチス・ヒトラー政権時の投票率

国民の投票しない権利を剥奪し、選挙に行かない人間を非国民扱いする非常に危険な風潮が人類の歴史上最も端的に現れていたのは、ナチス・ヒトラー政権時のドイツです。

ナチス・ヒトラーが政権を奪取した1930年代初頭のドイツは当時は世界で最も民主的な憲法とされていたワイマール憲法下にあり、男女平等の普通選挙が行われ、70%代~80%代という非常に高い投票率を維持していました。

編集後記:1097号 – 週刊金曜日公式サイト
http://www.kinyobi.co.jp/from/20160722.php

ナチが国会で第一党になった1932年7月の選挙は投票率が70.84%で、ヒトラーを首相に押し上げる結果となった同年11月のそれは、80.58%だ。

この様に非常に高い投票率の選挙で支持率を大きく伸ばし政権を奪取したナチスですが、さらにナチス・ヒトラー政権時の1933年11月ドイツ国会選挙の国会選挙投票率は、ほぼ100%という驚異的な水準に達しました。

1933年11月ドイツ国会選挙 – Wikipedia

1933年11月12日のドイツ国会選挙は、1933年11月12日に行われたドイツの国会の選挙である。この選挙の時点ですでに国家社会主義ドイツ労働者党以外の政党はすべて解散させられていたので、ナチ党のみが出馬する選挙になった。

またこの国会の選挙日と同日に、国際連盟からの脱退を信任する国民投票も実施されており、こちらは95.1%もの支持票が賛成に投票されている。

ナチ党組織や行政組織による投票行動への監視は厳しいものであり、投票場への組織的な駆り出しが行われた。アイヒシュテット小管区のナチ党組織の報告では、小管区全体の投票率が100%に達している。投票内容自体も監視の対象であり、誰が反対票を投じたかを明らかにすることができた。アイヒシュテット小管区では、ナチ党支持率が100%となる地域が76市町村のうち、56にのぼったとされている。

この様に有権者が「どの政党にも投票をしない」という意志表示をする権利を奪われてしまっている状態は、民主主義にとって、そして国家にとって非常に危険な事態なのです。

個人には非政治的に生きるという権利があるはず

個人には非政治的に生きる、そして政治に関心を持たないという権利もあるはずです。

「選挙に行かないのはおかしい!」と個人の関心の対象までも世間によって強制される風潮。それは個人の価値観の自由を踏みにじる思想的なファシズムです。人権を尊重するのであれば、それは決して許される事態ではありません。

個人が人生の中で一体何に重きを置くのか、仕事、お金、恋愛、趣味、宗教、芸術、哲学…etc

政治はその様々な価値観や物差しのたった一つにしか過ぎません。

そして人権を尊重するのであれば、各個人がどの価値観に重きを置くかは、完全に個人の自由として認められているはずです。

当然、「恋愛には興味があるけど政治には興味がない」「趣味には重きを置くが政治は重視していない」という考え方も個人の自由です。本来それを周囲が批判することは出来ませんし、何に対して関心を持つかということを強制することも出来ません。

選挙に行かない人間を非国民扱いする、そして批判するという様な姿勢は、思想の多様性を否定し個人の人権を侵害するファシズム的(全体主義的)で危険な姿勢なのです。

投票率が7割を超えない限り日本が軍国主義化することはあり得ない

なぜ私が「安倍政権がナチス化する」とか「安倍晋三はヒトラーだ」とかいう妄言を一笑に付して全く相手にもしないのかというと、ヒトラー政権時のドイツと比較して現在の日本の投票率は圧倒的に低いからです。

前回2014年の衆院選の投票率は戦後最低の52.66%となるなど、ヒトラー政権時とは異なり、安倍政権の現在では、「投票しない人間は非国民だ!」「政治に参加しない人間は日本人失格だ!」と言う様なファシズム的な風潮は高まっていません。

有権者の関心高まらず…投票率最低 – 読売新聞(2014年12月15日)
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news/20141215-OYT1T50118.html

14日投開票の第47回衆院選の投票率(小選挙区)が戦後最低の52・66%となったのは、民主党が自民党の「対立軸」とはならず、「政権選択」の意味合いがなくなったことで、有権者の選挙への関心が高まらなかったためとみられる。

野党第1党の民主党は、2012年衆院選の惨敗から党勢回復が進まず、衆院の過半数の候補者を擁立できなかった。12年衆院選で旋風を巻き起こし、無党派層の受け皿となった「第3極」政党も、党内路線の対立で分裂したり、解党したりし、前回の勢いが見られなかった。民主や維新の党などが準備不足で候補者を擁立できず、「与党対共産」の一騎打ちの構図となった選挙区も少なくなかった。東北や北陸などでは、降雪で投票所に向かう有権者の足が遠のいた可能性がある。

総務省は15日午前、衆院選公示翌日の3日から13日までの11日間で、期日前投票(小選挙区選)をした有権者の最終値(速報)を1315万1962人に修正した。

今回2017年に行われる第48回衆院選はさらに投票率が下がることが予想されていますので、現在の日本はファシズム的な政治参加を強要する同調圧力の世論は弱く、軍事的なファシズム国家となって暴走する可能性は低いでしょう。

近年の日本でナチスに最も近づいたのは小泉政権

「投票率が7割を超えない限り日本が軍国主義化することはない」というのが私の持論ですが、その観点から近年で日本が最もファシズム化し軍国主義化の危険をはらんでいたのは、政治が大きな関心を呼び投票率67.51%に達した小泉政権時代です。

郵政総選挙とは – コトバンク

2005年9月11日に投開票が行われた第44回総選挙は、自民党が296議席を獲得し圧勝した。これは与党・公明党の31議席を加えると、衆議院で3分の2を超える数字である。とりわけ特徴的なことは、都市部で弱いといわれてきた自民党が、東京、神奈川、大阪などの大都市で圧勝したことである。これに対して、二大政党化の一翼を担ってきた民主党は113議席を獲得したに過ぎず、公示前の177議席を大きく下回った。投票率は小選挙区で67.51%と、前回の59.86%を7.65%上回り、有権者の関心が高かったことを示している。

実際にこの第44回総選挙当時の小泉政権の「B層」をターゲットとした政治手法は、ナチス・ヒトラーとその宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッベルスの大衆宣伝と非常に酷似する部分があり、また、政治に興味のない個人、選挙で投票を行わない個人を蔑む様な異様な風潮が蔓延していた時代でした。

B層 – Wikipedia

B層とは、郵政民営化の広報企画にあたって小泉政権の主な支持基盤として想定された、「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」と定義されている。

2005年、小泉内閣の進める郵政民営化政策に関する宣伝企画の立案を内閣府から受注した広告会社・有限会社スリードが、小泉政権の主な支持基盤として想定した概念である。

スリードの企画書では国民を「構造改革に肯定的か否か」を横軸、「IQ軸(EQ、ITQを含む独自の概念とされる)」を縦軸として分類し、「IQ」が比較的低くかつ構造改革に中立ないし肯定的な層を「B層」とした。B層には、「主婦と子供を中心した層、シルバー層」を含み、「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣閣僚を何となく支持する層」を指すとされる。

■PR提言
郵政民営化の広報にあたっては、小泉政権の主な支持基盤とされる「B層」に絞ってPRを展開すべきとし、ネガティブな表現を極力避けたうえで、「B層」に伝わりやすい新聞折込みフライヤー(チラシ、ビラ)やテレビ・ラジオの広報番組を利用し、民営化の必要性を徹底的に「ラーニング」させるように、また、「A層はB層に強い影響力を持つ」として、「A層」向けに数万人規模のイベントを開催し、間接的に「B層」にも影響を与えるようにと提言した。

「投票をしない人間は非国民!」「政治に興味のない人間は大人として失格!」という風潮を作り上げ、「B層」である情報弱者の選挙への参加を煽り、そして彼ら「B層」をターゲットとした宣伝手法によって票を伸ばす。これが第44回総選挙で296議席を獲得し圧勝した小泉ヒトラーの方法論でした。

しかしこの第44回総選挙でも投票率は67.51%と危険水域である7割未満に留まり、日本のファシズム化はすんでの所で回避されたのです。

「投票をしない人間は非国民!」「政治に興味のない人間は大人として失格!」という風潮に負けず、投票をしなかった32.49%の国民が日本を重大な危機から救ったと言えるでしょう。

ちなみに私もこの選挙で投票をしませんでした。ずっと家でアニメのDVDを見ていました。私の人生にとっては郵政民営化問題よりも、ふたりはプリキュア マックスハートの方が重要だったのです。

以上、「選挙に行かない人間を非国民扱いする危険な風潮。有権者には「投票をしない」という権利もある」の記事でした。

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