昔の準ひきこもりは寡黙な職人として一人前の社会人になれた。コミュ力至上主義が現代日本のニート問題の原因

昔の準ひきこもりは手に職を付けて寡黙な職人になり、一人前の社会人になることが出来ました。「明るい性格でコミュ力が無ければ社会人として通用しない」というようなバブル期以降に強まったコミュ力至上主義・リア充的至上主義こそが、現代の日本のひきこもり・ニート問題の根本的な原因です。

大学生における準ひきこもり行動に関する考察

「大学生における準ひきこもり行動に関する考察」という2006年に富山国際大学の国際教養学部紀要に掲載された教育社会心理学者・樋口康彦による小論文をご存知でしょうか?

準ひきこもり – Wikipedia

準ひきこもりは、2006年、樋口康彦が紀要『大学生における準ひきこもり行動に関する考察』の中で提唱した概念であり、大学には登校するが家族以外の人間とほとんど付き合いがなく、対人関係や、社会経験が不足している状態のことをいう。

樋口は、この準ひきこもりが、ニート、フリーター問題の隠された要因になっていると指摘しており、引きこもりのように部屋に閉じこもるわけではなく、問題が顕在化するのは就職活動 期や大学卒業後と述べている。

非常に興味深い内容ですので以下から是非読んでみて下さい。PDFで6ページほどです。

大学生における準ひきこもり行動に関する考察 – 富山国際大学
http://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2006kokusai-PDF/higuchi2.pdf

全文が極めて興味深い内容ですが、特に以下を引用します。

しかしある時、突然次のことを閃いたのである。
「就職活動などできるわけがない。実は彼はひきこもりなのだ」

大学にはきちんと来ており、単位もしっかり取れているので適応していると思い込んでいたのであるが、大学という誰とも関わらずに過ごして行ける環境の中で、偽りの適応を示していただけのことで、ライフスタイルの本質はひきこもりと何ら変わりはない。中学や高校のようにクラスが固定されている場では、仲間の輪に加われないことがプレッシャーになったり、いじめにあったりするが、大学ではそれがない。彼にとって大学への登校とは、毎回講演会や映画に行くようなものであり、気軽にできていたのである。

ひきこもりの人でもコンビニには行けるという話をよく聞くが、そのように密で複雑な人間関係に巻き込まれる恐れのない場所になら出かけられるという点で、大学には来ることができているに過ぎない。夜遊び等せず真面目に大学に出てくるのも、遊びを知らず、また一緒に出歩く友人もいないことからそうせざるを得ないのである。つまり夜遊びさえできない。結局、強い非社会性・非社交性を持っているにもかかわらず大学という、学級もなく複雑な人間関係に煩わされることがない環境であるがゆえに、見せかけの適応をしていたに過ぎないのである。社会に出ていくことへのレディネスの不足は特殊な環境の中で隠されているだけなのだ。つまり社会と本格的に関わるには、あまりにも未熟だったのである。

ただ、真面目に大学に通い、単位もきちんと取れていることから、両親や、担当教員、そして本人も問題点に気づいていなかったのである。問題点とはすなわち、圧倒的な社会経験の不足の中で、人と関わることが苦手であるという欠点が矯正されたわけではないことである。就職活動、職場生活を送るに必要な社会的スキル等のレディネスが全く形成されておらず、その後の生活に適応できないということである。大学時代の彼は社会に参加しているようで参加していなかった。一応、家の外には出て行くものの、誰とも深い関わりを持つことはなくただ自分の世界の中で生きていただけである。病気かというとそうとまでは言えず、また表面上は今の環境に適応しているかのように見え、大学生活の後半頃になってから問題が暴露されるという点で実に厄介である。こういった現象は純粋なひきこもりではないが実質はひきこもりに近いという点で準ひきこもり行動と言えると思う。

内容を要約すると、一見すると学業優秀で真面目でまともな大学生活を送ることが出来ているような学生であっても、実質的には社会性が全く身に付いていない完全に未熟な状態であり、社会的に引きこもり状態である。その様な状態を「準ひきこもり」という表現で言い表したという提言です。

教育社会心理学者の樋口康彦による現代のひきこもり・ニートなどの社会問題の核心を突いた非常に興味深い提言ですが、しかし待って下さい。

ひきこもり・ニートなどは現代日本独特の深刻な社会問題ではありますが、当たり前に考えて、かつての日本においても、この様な社交性の低く内向的な性格で寡黙なタイプの人間は非常に多く存在していたわけです。

しかし、戦前や昭和中期などまでのかつての日本には、ひきこもり・ニートという社会問題は露見していませんでした。

つまりこれは、「かつての日本には、社交性の低く内向的な性格で寡黙なタイプの人間が社会の中で生きる受け皿が存在していた」と言うことが出来るのではないでしょうか。

江戸時代であれば「準ひきこもり」はひっそりと陶器作りや漆器作りなどの職人をして暮らしていた

単刀直入に結論から書いてしまいますが、江戸時代であれば「準ひきこもり」は、1人で黙々と陶器作りや漆器作りなどを行う寡黙な職人として社会の片隅でひっそりと生きていたのではないかということです。

現代社会ではまともに社会と交われず就職も出来ずに、爪弾きにされてしまっている「社交性の低く内向的な性格で寡黙なタイプの人間」であっても、かつての日本であれば、その集中力や1人での孤独な作業を得意とする能力を生かして、社会の片隅で生きる場所を得ることが出来ていたのです。

これが適材適所な人材の振り分けが健全に機能していた本来の日本社会の姿と言えます。

このことからさらに論理を進めて行くと、日本においてひきこもり・ニートという問題が顕在化し始めたのは1980年代ですが、1980年代に入りこの適材適所の振り分けが健全に機能しなくなったということが、ひきこもり・ニートという問題の核心ではないでしょうか。

つまり、1980年代に入り、かつては寡黙な職人として社会の片隅でひっそりと生きていた様な「準ひきこもり」型の人間の為の社会の居場所が急速に失われて行ったこと。これが現代のひきこもり・ニート問題の核心ではないかということです。

1980年代の日本の社会で何が起こったのか。そして社会の中で一体どの様な変化があったのか。そのことを考えることが、ひきこもり・ニート問題を解く糸口です。

バブル期から日本中を覆い尽くしたリア充至上主義の風潮

「1980年代の日本の社会で発生した最大の出来事はバブル景気である」という見解に反論はないでしょう。

そして、バブル景気の醸成する浮ついた雰囲気によって日本中を覆い尽くしたのが、チャラチャラしたリア充至上主義の風潮です。

「リア充でなければ人ではない」という様な同調圧力が社会を覆い尽くし、1人で黙々と何かに没頭する人間を「キモいオタク」と蔑み笑い者にし、かつてひっそりと社会の片隅に生きていた寡黙な職人の為の居場所を破壊したこと。

このことこそが、ひきこもり・ニート問題の核心ではないかということが私の仮説です。

バブル景気の好況は1990年代に入り株価暴落と共に間もなく終了しますが、バブル経済の副産物であるリア充至上主義の病理は、その後もずっとしぶとく生き延び続けている。

そのために、実際に2003年に至っても早稲田大学「スーパーフリー事件」などの時代錯誤のバブル的なチャラチャラとした事件が発生したわけです。

極論で言ってしまえば、リア充至上主義を押し付ける狂った社会は、社会全体がスーパーフリーの様なものです。

「リア充でなければ人ではない」という様な同調圧力が社会を覆い尽くし、かつての日本ではひっそりと社会の片隅に寡黙な職人として生きていた「準ひきこもり」の為の小さな居場所も破壊し尽くされました。

そして居場所を破壊された社交性の低く内向的な性格の非リア充は、ひきこもり・ニートとなり、社会と完全に隔絶して立てこもる。

これが現代の日本のひきこもり・ニート問題の実相なのです。

華やかなバブル時代に入りチャラチャラとしたリア充至上主義が社会に蔓延するに従い、「オタク臭い」「根暗っぽい」と嘲笑され蔑まれ続けてきた、江戸時代において寡黙な職人が1人で黙々と行っていた様な地味な仕事の社会的地位を復権すること。

それが現代日本のひきこもり・ニート問題の解決の道ではないでしょうか。

1人で黙々と働きたい方にはITエンジニアがおすすめ

江戸時代に1人で山奥に住んで陶器を作っていた寡黙な職人の様に、あまり人と関わらずに1人で黙々と働いて生きていきたいという方には、ITエンジニアやWEBクリエイターの仕事がおすすめです。

私自身もまさに典型的な樋口康彦の言う「準ひきこもり」の大学生でしたが、「情報発信者のプロフィール」にある様に、紆余曲折を経て現在はWEB制作の仕事で年収450万円を得て、社会人として人並みに暮らしていくことが出来ています。

バブル期以降の日本では、社会に蔓延したリア充至上主義の風潮によって、「社交性の低く内向的な性格で寡黙なタイプ」の人間は実社会から抹殺され、ひきこもりやニートといった立場に押し込まれられてしまいました。

しかし、近年はIT産業の発展によって、決して社交的でリア充的なタイプの人間ではなくともITエンジニアやWEBクリエイターなどの「現代の職人」の様な仕事を得て、人並み以上の収入を得て生きて行くことの出来る場所が復活しているのです。

あまり社交的ではない内向的な性格のために、職場での人間関係でのストレスや精神的苦痛などからひきこもりやニートとなってしまったという方は、1人でパソコンに向かって黙々と作業することの出来るITエンジニアやWEBクリエイターの仕事での社会復帰を検討されてはいかがでしょうか。

以下の記事では、IT業界専門の転職支援サービスをそれぞれのサービスの特徴やメリット・デメリットを挙げながら比較しています。実務経験者向けのサービスも多いですが、IT業界未経験者でも利用可能なサービスも数多く紹介していますので是非参考にして下さい。

「IT業界はブラックではないか」と不安を持たれている方も多いと思います。そこら辺の実情については以下の記事で書いていますので参考にして下さい。

また、以下ではADHD(注意欠如多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)などの発達障害があるために普通の仕事がまともに出来ないと悩む方へ向けて以下の記事も書いています。

もしも何となく「自分はアスペっぽい」「自閉症的な性格だ」など心当たりがあれば上の記事もお読み頂ければと思います。

以上、「昔の準ひきこもりは寡黙な職人として一人前の社会人になれた。コミュ力至上主義が現代日本のニート問題の原因」の記事でした。

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