派遣契約の打ち切り通告で逆恨みする渡辺照子さんに感じる違和感

2017年12月6日の「LaborNet Japan」ニュースで記事に取り上げられた派遣会社から派遣契約の打ち切りを通告され「この会社が私の人生を搾取したんです!」と逆恨みする渡辺照子(わたなべ てるこ)さんに違和感を感じるのは私だけでしょうか。

「この会社が私の人生を搾取したんです!」派遣労働者・渡辺照子さん最後の出勤 – LaborNet Japan
http://www.labornetjp.org/news/2017/1206teruko

12月6日は、派遣労働者・渡辺照子さん(58歳/写真)の最後の出勤日となった。渡辺さんの仕事は、都内C社の一般事務で、2001年から17年間働いてきた。「3か月更新」だが事実上「自動更新」で働きつづけ、シングルマザーとして2人の子どもを育ててきた。ところが10月末に突然「次の更新はない、12月末で終了」と雇い止め解雇を通告された。賞与も交通費もいっさい出ない「派遣労働者」には、退職金もない。そして、いきなり寒空の年末に放り出されてしまうのだ。肩を落としながらとぼとぼと歩き、最後の出勤をする渡辺さん。

午前8時半、会社のあるビルの入口で、渡辺さんはいきなり会社名が刻んであるプレート板を、こぶしで何度も叩いた。「この会社が私の人生を搾取したんです!」。そして首にぶら下げている「入館カード(security card)」(写真)を取りだしてこう言った。「私を雇い止めにした総務部の最後の言葉は『最後の日にこのカードを返してください』のたった一言でした。このカードぼろぼろでしょう。私みたい…」と絶句した。本当にすり切れていた。職場に入退室するたびに長い間使ってきた「入館カード」だった。「壊れたコピー機を取り替えるのとは訳がちがう。私は人間だ。まして故障もしていない」と声を振りしぼる。同じ会社で派遣切りされたのは計5人、全て女性だ。24年勤続した女性は通告を聞いて「地面の底がぬけるようだ」と言ったという。

(中略)

非人間的働き方の典型である「派遣」をなくしたい、これが渡辺さんの願いだ。「会社の仕組みは士農工商の身分制度と同じ。派遣はその一番下の身分で人間扱いされていない。17年の間、交通費さえも出してもらえなかった」。「でもこの怒りをエネルギーに変えます! このままでは終われない。たたかいます」、渡辺さんからやっと笑みがもれた。

渡辺照子さんは17年間勤め続けた職場で派遣切りをされたことで「この会社が私の人生を搾取したんです!」と派遣会社や勤務先の会社への怒りを露わにしていますが、逆に言えば派遣社員という不安定な雇用契約であるにも関わらず17年間も契約を打ち切らずに雇い続けてくれた訳です。

しかも交通費こそ支給されなかったとはいえ、給料未払い等があった訳ではなく、17年間も雇用契約を打ち切らずに給与を支払い続けてくれています。

また、

同じ会社で派遣切りされたのは計5人、全て女性だ。24年勤続した女性は通告を聞いて「地面の底がぬけるようだ」と言ったという。

とあるように、同じく契約を打ち切られた同僚の派遣社員の方は24年間も派遣社員として勤め続けることが出来ています。

むしろ私には渡辺照子さんの派遣会社は非常に良心的な派遣会社に見えます。

終身雇用の幻想が実質的に崩壊した今の時代の日本では、正社員であっても24年間も同じ職場に勤め続けることが出来るというケースはかなり稀です。

それこそアメリカなどでは、正社員であっても成果が出せない従業員は1年2年で当たり前の様に解雇されますので、解雇されることが日常茶飯事の社会となっています。

派遣社員という立場でありながら、一般的な中小企業などに勤める正社員以上に非常に安定した長期雇用という恵まれた待遇を渡辺照子さんは得られていた訳です。

この渡辺照子さんのケースでは、いつ打ち切れても不思議ではない派遣契約でありながら、17年間や24年間も契約を解除することなく雇用を続けて続けてくれた派遣会社に非がある様には到底思えません。

そして私の目から見れば「この会社が私の人生を搾取したんです!」と派遣会社などに逆恨みする渡辺照子さんはクレイマー労働者にしか見えません。

「世の中の派遣会社叩きの風潮に乗っかって何でもかんでも文句を言って喚き散らせばワガママが通るんじゃないか」渡辺照子さんの言動にはその様な魂胆があるのではないではないでしょうか。

そんなに酷い職場ならなぜ17年間も辞めなかったのか

契約を解除されてから「交通費も支払われなかった」と渡辺照子さんは怒り狂って文句を言っていますが、そもそもの話として「そんなに酷い職場ならなぜ17年間も辞めなかったのか」という疑問がある訳です。

派遣社員という立場ではありながらもそれなりに満足して働くことの出来るまともな待遇や労働環境であったから、17年間という長期間、同じ職場で働き続けることが出来たのではないでしょうか。

ハフポストのこちらの記事を読みますと、渡辺照子さんの待遇は事務の仕事で手取りで毎月22万円の給料。

3カ月更新の契約で17年、突然の「雇い止め」 58歳派遣社員の思いは – ハフポスト
http://www.huffingtonpost.jp/2017/12/18/haken_a_23310240/

東京都の渡辺照子さん(58)は、派遣社員だ。

3カ月契約という細切れの更新を繰り返しながら、2001年から同じ会社で17年近く事務の仕事を担ってきた。手取り22万円の給料。賞与、交通費、退職金なし。これで2人の子どもを育ててきたシングルマザーだ。

だが、10月30日、突然「契約終了」を告げられた。
12月6日の出勤を最後に、12月31日で派遣先の会社を雇い止めになる。

事務の派遣社員で手取り22万円は悪徳どころか非常に良心的でホワイトな待遇です。

そもそも本当のガチのブラック企業やブラック派遣会社であれば、17年間や24年間もずっと働き続けることなど物理的に出来ません。

ちなみに私は以下の体験談の記事に書いているように、宿泊関連のブラック企業に正社員として勤めて3年で体を壊して辞めることになりました。しかも正社員として月間300時間近くも働いて手取りの月収は10万円台でした。

参考:ホテルのフロント勤務で辛かったこと大変だったこと。元フロントマンの体験談

これが人間を労働力として使い捨てにする本当のガチのブラック企業の現実です。

派遣労働にも関わらず手取りで月22万円の給与が支払われ、17年間や24年間も雇用を継続してくれる良心的な派遣会社。そして17年間や24年間もずっと働き続けることの出来るまともな労働環境の職場。

私にはこのケースがブラック企業やブラック派遣会社だとは到底思えないのです。

2018年6月の追記:渡辺照子さんの待遇を皆羨ましがってる

2017年末に公開したこのブログ記事には半年間で比較的多くのアクセスが集まりましたが、以下の様な検索キーワードでの記事訪問が多くあります。

  • 渡辺照子 勤務先
  • 渡辺照子 資格
  • 渡辺照子 派遣 資格
  • 渡辺照子 派遣会社
  • 渡辺照子 派遣会社 どこ
  • 渡辺照子 派遣 会社名
  • 渡辺照子さん
  • 渡辺照子 レイバーネット
  • 渡辺照子 派遣先

「渡辺照子 勤務先」「渡辺照子 派遣先」「渡辺照子 派遣会社」「渡辺照子 派遣会社 どこ」などの語句で検索された方は、果たして「渡辺照子さんの派遣会社はなんてひどいんだ!会社を突き止めて叩いてやる!」と思って情報を調べているのでしょうか?

むしろ逆だと思います。

女性でしかも派遣社員にも関わらず手取りで22万円の月給を貰え、しかも20年間という普通の非正規社員にはあり得ない様な長期の雇用が保証される超優良派遣会社。

渡辺照子さんのニュースでそんな天国の様な派遣会社が存在することを知り、

「手取りが14万円しかなくて生活が苦しい…渡辺照子さんの派遣がどこか調べて私も勤めたい…」

という様な切実な願いでこの様な検索をしているのではないでしょうか。

その証拠に「渡辺照子 資格」「渡辺照子 派遣 資格」などでの検索語句もあり

「渡辺照子さんは私と同じ女性の派遣社員なのに私よりも10万円近くも月給が高い…一体どんな資格があれば渡辺照子さんの様な待遇を得られるんだろう?」

と思ってこれらの検索語句で情報を調べているのです。

ダダをこねてる暇があるならとっとと次の仕事を探すべき

この様に派遣社員としては羨まれる様な好待遇を得られていたものの派遣切りにあってしまった渡辺照子さん。

では、渡辺照子さんはこれからどうすれば良いのでしょうか。

ダダをこねてる暇があるならとっとと次の派遣やパートの仕事を探すべきだと私は思います。

渡辺照子さんは派遣契約を打ち切られたからと言って悲観する必要は全くありません。

派遣契約の解除通告は死刑宣告でも人生の終わりでもありません。

現在の日本の労働市場では、若者不足と団塊世代の退職などが原因の労働力人口の減少によって猫の手も借りたいレベルの深刻な人手不足状態が加速していますので、60歳前後の女性であっても健康で体が動かせさえすれば、探せばいくらでも派遣やアルバイトやパートの仕事は存在します。

むしろ今まで勤めていた職場よりもより給与や待遇の良い勤め先を見つける可能性も0ではありませんので、そんなに古い職場に文句や不満があるのであれば、契約打ち切りの撤回を狙っていつまでもグダグダと文句を言ってダダをこねていないで、とっとと他の派遣会社に登録するなどして次の職場を探すべきです。

とは言え心情的には渡辺照子さんの心情は理解出来る

とは言え心情的には渡辺照子さんの逆恨みの気持ちは、とてもよく理解することは出来ます。

渡辺照子さんのお気持ち自体はとても分かるので、渡辺照子さんの怒りの気持ちを代弁する記事を書きました。もし良ければこちらの記事も是非お読み下さい。

参考:派遣社員はいくら仕事を頑張っても評価されない!同じ仕事をしている正社員よりもちゃんと働いているのに!

また、渡辺照子さんの心情を察すると、まさにクリスマス直前に突然ずっと付き合っていた彼女に振られて失恋しクリぼっちが決定した私の様なものです。

58歳というもう少しで年金の支給が開始するという年齢。そんな人生のゴールが見え始めた矢先の突然の派遣契約解除。

突然の出来事に人生のプランを狂わされ、真っ暗な奈落の底に突き落とされた様に感じてパニックになって「何てむごい仕打ちだ!血も涙もない!人間の所業とは思えない!」と逆恨みの感情を抱いてしまう渡辺照子さんの気持ちは本当によく分かります。

私もクリスマス直前に突然ずっと付き合っていた彼女に振られて失恋しクリぼっちを強いられることが決定し、「何てむごい仕打ちだ!血も涙もない!人間の所業とは思えない!」と彼女に逆恨みしてストーカーになりそうな気持ちです。

しかし、落ち着いてください。

派遣会社も派遣先の会社もボランティア団体や社会奉仕ではなく営利を目的とした企業ですので、渡辺照子さんの個人的な都合や人生プランのためだけに派遣契約を継続出来るわけではありません。

クリスマス直前に付き合っていた私を振って捨てた元彼女も同様です。私の事情やクリスマスプランなど「知ったことか」というのが彼女の本音です。

それを逆恨みして、派遣会社に文句を言って契約解除の撤回を求めたり、彼女に復縁を迫ってストーカーになったりすること。それはやはり非常に未練たらしく女々しい態度ですし(渡辺照子さんは女性ですので女々しくても当たり前ですが)、人として正しい道とは言えません。

心の底からどうしようもないほどの強い怒りがこみあげてくる渡辺照子さんのお気持ちは分かりますが、とっとと気持ちを切り替えて他の派遣会社に登録して次の職場を探しましょう。

派遣社員で手取り22万円という非常に恵まれたホワイト待遇の職場を離れることはとても辛いですが、他にもきっと良い職場があるはずです。

今の恵まれた職場を離れることで手取りは18万円程度に下がっても、10万円程度のボーナスや交通費などは支給される職場と出会うことが出来るかもしれません。

2018年現在の日本では派遣会社の8割は交通費を支給してくれませんが、中には交通費を非課税で全額支給してくれる派遣会社も存在します。

その様な派遣会社に登録するというのも派遣社員の自己防衛としては有効です。

参考:派遣社員は交通費が出ないのが当たり前!しかし交通費を全額支給してくれる派遣会社も存在する

また、大手企業の工場勤務の派遣社員などは、40代未経験者でも働ける上に、待遇がホワイトで一般的な正社員サラリーマン並の給与と福利厚生ですので、現在の待遇に不満のある派遣社員の方には非常にオススメです。

参考:40代職歴なしでも年収500万円!大手企業の工場勤務はホワイトで好待遇

私も虚しいひとりぼっちのクリスマスをオナニー三昧で乗り越えて頑張りますので、渡辺照子さんも人生の希望を捨てずに頑張りましょう。

渡辺照子さん、こんな下品な締めですみません…

以上、「派遣契約の打ち切り通告で逆恨みする渡辺照子さんに感じる違和感」の記事でした。

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