創作家は人工知能で代替可能。しかし批評家はAIでは代替不可能

創作家は人工知能で代替可能です。しかし批評家はAIでは代替することは出来ません。

これからの世界はAI(人工知能)の発達と普及によって、創作家やクリエイターよりも批評家の地位や価値が高い時代へと突入していきます。

AI(人工知能)はクリエイティブな創作活動も得意

クリエイティブや創造性は人間の専売特許であるかの様に勘違いして「これからのAI時代の働き方にはクリエイティブが求められる」と考える方が多いですが、実はAI(人工知能)はクリエイティブな創作活動も人間より得意です。

そもそもの話ですが、私達人間に本当に0から何かを生み出す創造性やクリエイティビティなど持ち得るでしょうか?

本当に純粋に0から何かを生み出すことなど神や創造主にしか出来ません。

本質的に言えば、私達人間の閃きや発明や想像力なども全て元を辿ればすでにこの世の中に存在するものの形を変えた焼き直しに過ぎません。

芸術の世界で言えば優れた映画監督ほど過去の名作を非常によく見て参考にしていますし、飛行機を生み出したライト兄弟などの天才発明家も空を飛ぶ鳥など自然を参考に模倣しているだけです。

現実の世界で起きた出来事を描くドキュメンタリー作家の創作は当然この世界の事物の焼き直しですが、創造的なファンタジーを描く小説家やシナリオライターなども聖書や神話が世界観やプロットの元ネタであることが多いです。

ミュージシャンや作曲家の創作もあからさまなパクり行為をしていなくとも多かれ少なかれ既存のコード進行の焼き直しに過ぎません。

この様に人間の創作やクリエイティブは本質的には既存の作品や自然界の模倣と焼き直しですので、クリエイターや創作家はコンピューターと機械で十分に代替することが可能なのです。

AIによる作曲は技術的にほぼ実現に近づいている

ただ、この様に「人間の創造性はコンピューターで代替出来る」と言っても信じようとしない方も多いかと思います。

しかし、現実的にAI(人工知能)による作曲は技術的にほぼ実現に近づいています。

作曲はクリエイティブで芸術的な仕事の最たるものですが、実はコードや音階という無数の記号のパターンを組み合わせる作曲のおプロセスは、本来的には人間以上にAIが得意としている分野なのです。

人工知能が著作権に生み出す悪夢 – アゴラ
http://agora-web.jp/archives/2023944.html

ヒップホップでは、過去の楽曲から数秒を切り出し繰り返し、その上にラップを載せるサンプリングという技法が用いられる。「著作権侵害」と元の楽曲の作曲者から訴訟が提起されることが続き、元の作曲者が勝訴した事例も出た。何秒以上使ったら侵害という明確な基準があるわけではないが、ウィキペディアによれば、その後、メジャーレーベルから発表されるサンプリング作品のほとんどは正規にライセンスされたものとなったそうである。サンプリングされたらライセンス料(使用料)が得られる仕組みができたわけだ。

科学技術振興機構は、助成先の大阪大学が、ユーザの脳波反応に基づいてユーザ好みの曲を自動的に作曲する人工知能を開発したと報道発表した。音域はせいぜい2オクターブ、10秒の曲なら30個か50個くらい音符を並べるだけ、気持ちよく聞こえる音の並べ方や組み合わせも協和音として知られているから、人工知能がトライするにはよい対象だった。1000文字のショートショートを好みに合わせて自動生成よりずっと簡単である。

AIによる自動作曲は現在ではまだまだ発展途上の段階です。しかし、すでに2017年時点で実際に以下の様な楽曲をオートマティックに作成することが可能になっています。

AI作曲のビートルズ風の曲「Daddy’s Car」

AI作曲のビートルズ風の曲「The Ballad of Mr Shadow」

AI作曲家、ビートルズ風の曲を作る – ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/12053994/

人工知能の作る音楽とは。

以前Googleが「Magenta」プロジェクトのひとつとして、人工知能(AI)が作曲した音楽を公開していました。今度はソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL)が、作曲するAIを開発しました。こちら、得意な作曲ジャンルはありません。「〇〇風」といっていただければ何でもできます。というのも、この作曲AI「Flow Machines」は、データベースにある膨大な曲から、音楽のスタイルを学習するからです。

音やメロディー、テクニックを掛け合わせ、どんなジャンルの曲でも作り上げることができます。AIによる作曲は、さまざまなジャンル、作曲家の曲から集めた1万3000ものリードシートが組み込まれたデータベースを作るところからスタート。次に、作りたい曲のスタイルを人が選択。できたメロディーを繋げあわせて完成。途中、人間の手を借りる作業もあります。最終的なミックスも人間が担当。

説明するより聞くが早し。例えば、AI作曲のビートルズ風はこんな感じ。タイトルは「Daddy’s Car」。編曲、プロデュース、歌詞には、フランスの作曲家Benoit Carre氏が参加しています。

アメリカを代表する作曲家、アーヴィング・バーリン、デューク・エリントン、ジョージ・ガーシュウィン、コール・ポーターをミックスしたスタイルがこちら。タイトルは「The Ballad of Mr Shadow」。

この2曲、2017年発売のAIポップアルバムに収録予定とのこと。AI作曲家のメジャーデビューは目前です。

人間の棋士のチャンピオンを打ち破ったアルファ碁、人間の将棋名人を打ち破ったポナンザの事例を見れば分かる様に、深層学習(ディープラーニング)などの機械学習アルゴリズムによってAIは恐ろしいほどの急激なスピードで進化しています。

「強化学習」によって戦闘力を強化された最新のアルファ碁ゼロは、人間のチャンピオンを打ち破ったアルファ碁や、トップレベルのプロ棋士達に全勝したアルファ碁マスターすらまるでヤムチャを相手にするかの様に軽くあしらい100戦全勝で圧倒するなど、ボードゲームにおけるAIの進化はまるでドラゴンボールの世界の戦闘力の様に想像を絶するインフレ度で加速しています。

最強AI「アルファ碁ゼロ」、人間の棋譜頼らず強くなる – 朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASKBF55WWKBFULBJ00H.html

世界最強の人間の棋士より強い囲碁の人工知能(AI)を開発した英ディープマインド社が、さらに腕前を上げたAI「アルファ碁ゼロ」を開発した。人間の棋譜は学ばず、AIどうしが対局を繰り返して上達し、独自の「定石」も見つけたという。18日の英科学誌ネイチャーで発表する。

同社の囲碁AIはこれまで、人間の棋士による過去の膨大な棋譜を学習したうえでAIどうしが繰り返し対局する「強化学習」という手法で腕を磨いてきた。2016年には韓国の李世乭(イセドル)九段を4勝1敗で下し、注目を集めた。

アルファ碁ゼロは、棋譜のデータに頼らず、人間の初心者以下の状態から強化学習だけで上達する。490万回の自己対局の後、李九段に勝ったAIと対局して、100戦全勝。2900万回の自己対局の後では、今年初めまでに日本の井山裕太・現七冠を含むトップ棋士らに60戦全勝したAI「アルファ碁マスター」も圧倒した。

この様にAIは爆発的な進化の途上にありますので、音楽の分野では遅くとも今後5年以内には、当たり前の様にAIによる人間以上のクオリティの作曲が可能になるでしょう。

近い将来AIは様々な領域や分野で人間の創造性を上回る

そして、このAIの能力が人間の脳を上回るという流れは、今後は小説や文学などの言葉と文章による創作の分野でも同様に広がっていくことが確実です。

AIによる言葉と文章の創作では、すでに以下の様に自動的にニュースを生成する技術が実現されています。

SNS情報からニュース記事を自動作成する「AI記者」をSpecteeが開発 – CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35100782/

Specteeは5月8日、ディープラーニング(人工知能技術)を活用してSNSから収集した事件・事故・火災・自然災害などの情報をもとに、自動的にニュース記事を作成する技術に関する2つの特許を申請し、特許庁より受理されたと発表した。

同社では、事件・事故・災害などの情報をSNSをベースに早期に覚知して報道機関向けに配信するサービス「Spectee」を展開しており、現在全国で約100社の報道機関に採用されているという。

今回の受理された技術は、SNSの投稿をベースに自然言語解析を行い、その事件が「いつ」「どこで」「何が」「どの程度の規模か」を自動的に判別し、1本のニュース記事としてまとめるもの。具体的には、(1)SNSの投稿から自動的に記事化をする一連の技術と、(2)複数の投稿から事象の発生地点割り出す技術で、いずれもディープラーニングの技術を応用しているという。

同社が実施した実験では、平均的に4~5件のSNSの投稿で300字程度のストレートニュース記事を作成できたという。都市部で事件や事故が発生すると、通常2桁を超える数の投稿が集まるため、十分に正確な記事を作成できるとしている。

なお、同社ではこれまでも、ディープラーニングを活用した「画像認識の効率化および、高精度化技術」や「自然言語解析の高精度化および、その処理技術」など、人工知能に関する複数の特許を取得している。

すでにAIによる代替がほぼ実現化しつつある作曲がコード進行の組み合わせであることと同様に、小説や文学も文字や文節の組み合わせであり、機械的なパターンによる構築が可能な分野です。

小説や文学などの分野においてもAIが人間の創造性やクリエイティビティを上回る日は決して遠くはないでしょう。多くの作家・小説家・ライターが仕事を失い稼げなくなる未来は確定的です。

AIには芸術の創作は出来るが鑑賞と批評は出来ない

この様にあらゆる創作やクリエイティブの分野に進出し人間の仕事や行為を侵食しつつある人工知能ですが、しかしAIにも絶対に出来ないことがあります。

それは芸術を鑑賞して批評することです。

もちろん人間の歌に点数をつけるカラオケ採点機のマシーンの様に創作物に対して機械的に採点することはAIにも可能ですが、それは本当の意味での鑑賞でも批評でもありません。

簡単な話、カラオケ採点機で100点を付けられてそれで歌い手の人間は完全に心から満足することが出来ますか?

たとえ非常に正確に歌唱の力量や技術を採点することが可能なアルゴリズムであったとしても、それはあくまでも機械やコンピューターによる採点です。

聴き手となった音楽ド素人である生身の人間の一粒の涙の方が、歌い手の人間にとってはコンピューターや機械によるどれだけ高度で正確な採点よりも、遥かに意味が大きいのです。

例えばコンピューターやAIに「カッコいい」と言われたり、女性であれば「可愛い」と言われて嬉しいですか?

私ならコンピューターやAIに何100万回褒められても全く嬉しくありません。

一方で生身の女の子に一回「カッコいい」と言われたり、女性であれば人間の男性から一言「可愛い」と言われた方が遥かに嬉しいはずです。

AIや人工知能には芸術の創作は出来ても鑑賞と批評は私達生身の人間にしか出来ないというのはそういうことです。

創作やクリエイティブはその作品自体が意味を持ちますので、たとえば非常にクオリティが高く美しい旋律の癒しの音楽であれば、たとえAIが自動的に作成した音であっても人間にとっては全く問題ない訳です。

そのコンピューターが作り出した美しい音を聴いて人間は癒されることが出来ます。

しかし、鑑賞や批評という行為は生身の人と人とのコミュケーションが根幹にありますので、本質的にそれをAIが代替することは不可能なのです。

人間はAIの生み出した音楽などの創作物であっても鑑賞して癒され楽しむことが出来る一方で、人間の表現者は高機能なAIに高評価の採点をされても承認欲求が満たされることはありません。

AIには人間の鑑賞者や批評家の様に表現者の心を揺さぶることは決してできません。

人間の真似をして涙を流すAIとかを開発しても虚しくなるだけです。

この様にAIが様々な分野に普及し導入されていくこれからの時代において人間に求められる仕事や役割は批評であり批評家です。

もしもAIが絵画の世界に導入されれば、ラッセンの写実絵画などの価値はあっという間に紙屑以下になるでしょう。

ただ、ピカソやフランシス・ベーコンの抽象絵画などは、その作品自体が創作であると同時に人間からの視点での批評の意味合いも持ちますので、AIが美術やアートの世界に導入されてもおそらく価値を保ち続けるのではないかと思います。

多くのクリエイターや創作者の地位が没落し、批評家の地位や価値が高い時代へと突入する。

それがこれから訪れようとしている世界の姿なのです。

以上、「創作家は人工知能で代替可能。しかし批評家はAIでは代替不可能」の記事でした。

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