日本の中間管理職は上司と部下の板挟みで理不尽な要求に追われる辛い役職

「管理職」という言葉を聞いてどの様なイメージが頭に浮かぶでしょうか。

管理職という役職に対して漠然と「カッコいい」「偉い」「ステイタスがある」という良いイメージを持っていて、「管理職に憧れる」「管理職になりたい」という感情を持っている方も多いかもしれません。

しかし、現実には課長や係長などの日本の中間管理職は、上司と部下の板挟みで理不尽な要求に追われる辛い役職の仕事です。

上司である部長には説教をされ、部下には文句を言われる。上からプレッシャーを掛けられ下からも突き上げられる板挟みで、多くの中間管理職は常日頃から非常に大きなストレスを抱えて仕事をしています。

会社で働いてこの様な中間管理職の実態を身近で見ているために、「敢えて管理職にならない」という選択をするサラリーマンも最近は非常に増えて来ています。

中間管理職にとって風当りの強い時代となっている日本

現在の日本はかつての高度成長期とは異なり商品や物のなかなか売れない不況の時代です。

かつての経済成長期の日本であれば、経済の発展と共に右肩上がりで消費も増し続け、それにより会社や部署の売上や収益という成果も右肩上がりで達成し続けることが出来ました。

個人や部署の売上や収益、契約数などに「ノルマ」を課すという文化は、この右肩上がりの経済成長期に定着した企業文化です。

経済成長期の日本では、黙っていても人口も経済規模も消費も右肩上がりで増大し続けていましたので、はっきりと言ってしまえば、大して考えもせずただ普通に商品を売っていれば、簡単に前期や前年度以上の売上成果を出し続けることが出来たのです。

この様な前向きで右肩上がりの時代では、さらに社員に発破をかけてモチベーションを高める意味で、売上や販売個数などのノルマの設定も非常に効果的な施策でした。

売上などのノルマを課されても好況の後押しによってそのハードルを乗り越え、ハードルを乗り越えたことでその部署の一体感も増し、さらにまたノルマをのハードルを乗り越え成果を出し続ける。成果を出し続けることで部下からの信頼は高まり、そして上司からの評価も高まり出世や昇給に近づく。

かつての日本の企業では、この様な中間管理職を取り巻くプラスの循環が機能していました。

しかし、現在の日本は逆に右肩下がりの時代へと突入しています。

人口は減少に転じ、長期の不況で経済成長も完全に停滞。消費は低迷し、頑張って物を作ってもほとんど売れず、必死に営業をしても契約も全然取れない。日本ではもう20年以上もそんな停滞の時代が続いています。

この様な停滞と低迷の時代に最も厳しく辛い立場に立たされるのが、上司と部下に板挟みにされる中間管理職のサラリーマンです。

思う様な成果を出せないことで責任を問われる立場で、経営陣や役員などの上司からは「なぜ成果を出せないのか?」とプレッシャーを掛けられ、若い部下からは「結果を出せないこの人に付いて行ってもでは駄目なんじゃないかと」不信感も高まる。

50代以上の年配の経営陣や役員は右肩上がりの経済成長期の頃に働き盛りだったので、現在の物が売れない不況の時代の困難や大変さを身を持って知っていません。

彼ら経営陣や役員は「俺も若い頃はこんな苦労をして大変だったんだぞ!」と言いますが、彼らの若い頃は何だかんだで物を作りさえすれば今より遥かに簡単に売れる物不足の時代だったのです。

前年同期比で右肩上がりで売上や成果を増やし続けることが当たり前のかつてと、普通にしていれば右肩下がりの売上が当たり前の現在とでは、成果を出してノルマを達成することに対するハードルの高さが全く違います。

しかし、そんな事情の違いがあっても反論も言い訳も許されず、上司から言われ放題で怒りを飲み込み、グッと耐えるしかないのが大半の中間管理職です。中間管理職にとっては本当に厳しく風当りの強い地獄の様な時代が現在の日本なのです。

辛さや気苦労の割には得る物が少ない現代の中間管理職

この様に上からも下からもプレッシャーを掛けられ気苦労の絶えない大変な中間管理職ですが、かつて好況期だった頃の日本とは違い、その辛さや労力に見合う十分な見返りが得られない時代になっています。

不況の影響で会社としての売上も収益も伸びなければ、当然社員の給与も上がりませんし、さらに出世しようにも、現代の日本の企業では、上のポストは既にほぼ人員が埋まっていて空きがありません。

労働基準法41条でも「監督管理者については残業代が支給されない」と定められている通り、管理職になれば残業代が支払われなくなってしまいますので、重い責任を負わされて大量の業務処理に追われて毎日の様に夜遅くまで残業して必死に働いている割には、収入も思うほどは伸びません。

仕事は辛く大変で、その割には決して見返りも多くなく、現代の日本の中間管理職は、まさに会社の中であらゆる面倒事を押し付けられ貧乏くじを引かされた理不尽の捌け口の様な存在なのです。

中間管理職に昇進したがらないサラリーマンが増えている

この様な先輩や上司の中間管理職の姿を目の前で見ているためか、現在の日本では中間管理職になりたがらないサラリーマンが非常に増えています。

「中間管理職は責任が増して大変」「中間管理職になっても残業代も支払われず見返りが乏しい」「現場の最前線の仕事の方が自分には合っている」等の理由で中間管理職に昇進せず、ずっと平社員として働き続けようという考え方です。

この様な近年のサラリーマンに広がる「中間管理職拒否」の風潮を裏付ける様に、2017年2月6日~7日にマイナビニュース会員に対して行われたインターネット調査では、なんと7割以上が「管理職になりたくない」と回答しているのです。

管理職になりたくないのはなぜ? – マイナビニュース
http://news.mynavi.jp/news/2017/03/23/125/

管理職に憧れ、 目標にしているという人もいるだろう。しかしその一方で、最近では「管理職になりたくない」という人も増えているという。そこで今回は、マイナビニュース会員501名のうち、管理職についていない394名に「管理職になりたいですか?」と質問してみた。

Q.あなたは現在、管理職ですか?

はい 21.4%
いいえ 78.6%

Q.(「いいえ」と答えた方)管理職になりたいですか?

はい 26.4%
いいえ 73.6%

「管理職になりたくない」と回答した理由としては以下の様な意見が集まりました。

「管理職になりたくない」と回答した人の意見

■割に合わないから
・「残業が増える割に、給与が大したことがないから」(48歳男性/その他メーカー/技能工・運輸・設備関連)
・「大変そうだし、時間外の給与も無いようなので」(40歳男性/設計/技能工・運輸・設備関連)
・「責任だけ大きくなり給料は減る。いい事はない」(43歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)
・「休みもなかなか取れず、労働時間は長くなるのに残業代ももらえず、責任ばかりが増えるため」(38歳女性/物流・倉庫/事務・企画・経営関連)

■自分には向いていない
・「管理するタイプではないから」(36歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)
・「他人を叱ることに苦手意識があるため」(47歳男性/コンピューター機器/IT関連技術職)
・「自己管理も十分にできないので。技術職でありたい」(47歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「嫌なことをあえて言わなければいけないときとか大変だと思います。自分は気が弱いので上に立つ器ではない」(44歳女性/生命保険・損害保険/営業関連)

■もうこりごり
・「管理職だったけど、つらいのでやめた」(49歳男性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「一度、現場の管理職になったが向いてなくやめた。もう管理職にはなりたくない」(45歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)
・「以前管理職をしていたが、体調を崩したため一般社員に戻った」(51歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/技能工・運輸・設備関連)

■今の管理職を見て……
・「管理職の人を見ているといろいろ大変そうだから」(55歳男性/その他メーカー/技能工・運輸・設備関連)
・「ダメな管理職がいっぱいいるのを見て、自分はああはなりたくないと思った」(36歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「今の管理職を見て、目指してみたいと思わないのと、現場で働きたい気持ちの方が強いから」(28歳男性/輸送用機器/その他技術職)

■その他
・「今のポジションに満足している」(33歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「上から下から色々言われるとストレスが溜まる。それなりの収入がともなえば良い」(55歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/技能工・運輸・設備関連)
・「責任を負うのが嫌だから」(57歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「もう平社員で気楽に生きたい」(47歳女性/食品/技能工・運輸・設備関連)

この様な回答を受けてのマイナビニュースの総評は以下の通りです。

■総評

「管理職になりたくない」と回答した人が73.6%で、「管理職になりたい」と答えた26.4%を大きく上回る結果となった。

「管理職になりたくない」理由を尋ねたところ、「割に合わない」という回答が非常に多く、「賃金の割に労働時間や責任が重い」「残業代が出ない」「責任と給料が釣り合わない」といったコメントが並んだ。肩書きだけを与え、残業代を支払わない「名ばかり管理職」が以前より問題視されているが、そうしたこともあってか、管理職に対しネガティブなイメージを抱く人は少なくないようだ。

「自分には向いていない」という回答も多かった。「人の上に立つのは苦手」「統率力に自信がない」と、マネジメント能力に対する不安があるようだ。さらに、「以前は管理職だったが、その時の辛さが忘れられない」といった経験者からの声も寄せられた。やはり管理職は苦労の多い立場のようだ。

様々な面で辛く大変な割に給与や待遇などの面での見返りも乏しい中間管理職という理不尽な役職に対して、現在の日本企業の現場では「中間管理職は苦労の割に合わない」という風潮が完全に定着しつつあることが伺えます。

日本は誰も中間管理職のなり手がいない時代になる

この様にその負担と責任の割に見返りに乏しい中間管理職忌諱の風潮が広がるにつれ、日本は誰も中間管理職のなり手がいない時代に入ろうとしています。

誰も中間管理職のなり手が現れず、そして中間管理職が居なくなるこれからの時代。そんな時代に進もうとしている日本では「経営者と役員と平社員だけの会社」という体制の企業が非常に多くなってくることは間違いありません。

「中間管理職の業務を担える人材が居なくなり大変だ」ということになりそうな気がしますが、その一方でこれからの10年~20年間でIT(情報科学)やAI(人工知能)などの技術が急速に発展し中間管理職が行っていた業務の穴を埋めていきますので、将来的には中間管理職が消えてもおそらくそれほどの影響は出ないものと思われます。

頑として中間管理職になりたがらない社員と、中間管理職を欲する上層部とのせめぎ合いで、仕方なく高額の最先端AIを導入して中間管理職の業務を代行させるというケースが、これからの日本では非常に増えていくのではないでしょうか。

AIと中間管理職についてはこちらの記事も書いていますので、もし興味があればお読み下さい。

参考:経営者と平社員だけの会社が主流に。AIとITの発達で中間管理職は不要になる

以上、「日本の中間管理職は上司と部下の板挟みで理不尽な要求に追われる辛い役職」の記事でした。

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