新型コロナ自粛の経済的影響と不況では自殺者は増加しない

新型コロナウイルスの影響で飲食業・宿泊業・観光業など様々な業界で自粛が広がる昨今。

「このまま自粛を続ければ経済が停滞し失業や倒産で自殺が増える」と言われています。

しかし、私の予想では新型コロナウイルス自粛による経済的影響と不況では自殺者数は増加しません。

このブログ記事はコロナ自粛・コロナ不況ではなぜ自殺が増えないのかという理由を、各種の統計データと現代社会学の始祖であるデュルケームの「自殺論」を引用しつつ説明・証明していきます。


自殺論 (中公文庫)

不況で失業率が高まれば自殺者数が増えるのが日本の定説

失業率と自殺者数は比例する。そして不況で失業率が高まれば自殺者数が増えるとするのが日本の社会科学の定説です。

その根拠として挙げられるのが、バブル崩壊後の平成不況が深刻化した平成10年(1998年)から2011年まで自殺者数が年間3万人台で高止まりし続けた約10年間の統計データです。

以下のグラフデータにあるように、この10年間ほどはバブル崩壊と平成不況が国民生活に与えるダメージが本格化し、失業率の急激な上昇や自殺者数の急増などが起こった期間でした(クリックでグラフの画像を拡大します)。


参照:完全失業率の推移 – 立命館大学


参照:自殺者数の推移 – 厚生労働省

「このまま新型コロナウイルスを恐れて自粛を続ければその影響で経済の停滞が深刻化し、失業・倒産・貧困で自殺者が増える」という意見はこのデータを根拠にしたものであり、「自殺者の命を救うために少々の犠牲があっても経済を回していかなければならない」というのが彼らの主張です。

しかし、私はこのコロナ不況で自殺者が増えるという予測は間違いであると考えています。

発展途上国は日本より遙かに貧しいが自殺は少ない

なぜコロナ不況で経済が停滞して貧困問題が発生しても自殺者が増えることはないのか。

それは、アフリカ諸国などの発展途上国は日本より遙かに経済的に貧しく深刻な貧困問題を抱えているのにも関わらず、日本より自殺が少ないからです。

人間は貧しいから自殺する、経済的に豊かであるから自殺しない。

という単純な生き物ではないのです。

以下の2016年度のWHOの統計データにあるように日本の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は世界7位。

一方で世界の国々の一人あたりGDPのランキングで日本は26位です。

日本経済は停滞しているとはいえ、現在でも経済力の面では世界で上位10%の豊かな国であり、仮に貧困問題で自殺が増えるのであれば、アフリカ諸国などでは日本よりも遙かに多くの自殺が発生しているはずです。

しかし、現実の統計データではそうなってはいない。

単純に貧困問題が自殺を生むという考えは間違いなのです。

欧州圏では失業率10%が常態化しているが自殺は少ない

また、「失業率が高くなれば自殺件数が増える」ということも1998年から2000年代までの日本だけで起こった現象であり、それを普遍化して絶対的な法則と考えるのは間違いです。

以下の記事で説明している様に、実際にEU圏では10%前後の高い失業率が常態化していますが、失業率2%台の日本よりも遙かに低い自殺率で推移しています。

この世の中にはSyamuさん(syamu_gameとは – ニコニコ大百科)のように30代高卒無職童貞で世間に生き恥を晒しまくっても平気で親のすねをかじって生きている人間がいるように、人は失業して職を失ったからと言って自殺するという訳ではないのです。

YouTubeで生計を立てるなどという虹の上を歩くが如し幻想にしがみつき、ファンの助詞とコイニハッテンなどという絵空事を実像と錯覚し、30歳高卒無職が握手会を思い描く夢と現が逆転した貝塚ネバーランド。2014年12月、惜しまれつつも引退し今なお復活が待ち望まれる大物Youtuberシャム・ゲーム。その軌跡を追う。

社会科学的に自殺を分析したデュルケームの「自殺論」

人は貧困から自殺をするわけでない。さらに、人は失業したから自殺をするわけでもない。

では、人が自殺をする理由と要因は一体何か?

この自殺問題を社会科学的に分析したのがフランスの社会学者デュルケーム(エミール・デュルケーム – Wikipedia)の名著「自殺論」です。


自殺論 (中公文庫)

デュルケームの「自殺論」での社会的自殺の四分類

この「自殺論」の中でデュルケームは社会的要因によって引き起こされる自殺をその原因から以下の様に4つに分類しました。

■利他的自殺(集団本位的自殺)
献身や自己犠牲が強調される伝統的な道徳構造を持つ未開社会、さらにその延長線上にある軍隊組織に見られる自殺・殉死などが該当する。

■利己的自殺(自己本位的自殺)
過度の孤独感や焦燥感などにより個人が集団との結びつきが弱まることによって起こる自殺の形態。個人主義の拡大に伴って増大してきたものとしている。

■宿命的自殺
集団の拘束力が非常に強い状態で、社会が個人の欲求を過度に抑圧することで発生する自殺。

■アノミー的自殺
社会的規則・規制がない状態において起こる自殺の形態。集団・社会の規範が緩み、より多くの自由が獲得された結果、膨れ上がる自分の欲望を果てしなく追求し続け、実現できないことに幻滅し虚無感を抱き自殺へ至るものである。

利他的自殺(集団本位的自殺)は日本では戦時中のカミカゼ特攻隊などであり、宿命的自殺は恋愛での心中などを定義した自殺の分類です。未開社会や封建社会で多く見られる自殺の類型であり、現代の民主主義社会では稀な形態とされています。

つまり、デュルケームの「自殺論」に拠れば、現代社会では二番目の利己的自殺(自己本位的自殺)と四番目のアノミー的自殺が社会的要因による自殺の主流であると言えます。

1950年代後半好況期の日本の自殺者増加は利己的自殺

このデュルケームの「自殺論」の分類方法で日本の社会的要因による自殺者数の増減を解釈していきます。

1990年代終盤から2000年代の平成不況時の日本では戦後最悪の自殺者数が続きましたが、実は1950年代後半の一時期においても、特に20代の若者を中心に自殺者数が激増した時代が存在しました。


参照:昭和30年代初頭の青年の自殺 – データえっせい

1950年代後半といえば高度経済成長が始まった時期であり、GDP成長率が年10%前後に跳ね上がり、日本が戦後の焼け野原の貧しさから急激に経済発展し復興を果たした好景気でした。


参照:図録▽経済成長率の推移(日本)- 社会実情データ図録

また、この時期は経済の高度成長に支えられ、失業率も1%台後半から2%台前半で1980年代のバブル期より低い水準でした。


参照:完全失業率の推移 – 立命館大学

それにも関わらず若者の自殺が激増したの何故か?

そのヒントとなるのが以下の日本の産業構造(第一次~第三次産業) の推移のグラフです。


参照:産業別就業者数 – 独立行政法人 労働政策研究・研修機構

このグラフを見ると1950年代から第一産業の従事者が減少し、第二次産業・第三次産業の従事者が増加していったことが分かります。

この時期の日本は集団就職(集団就職 – Wikipedia)によって10代の若年者達が大量に地方の農村部から都市部へと流入していった時代であり、彼らの労働力が日本の戦後高度経済成長期の原動力となりました。

しかし、地縁の結びつきの強い田舎の農村部から個人主義的な都市部への移住は、彼ら親元を離れた上京者の精神的孤独を深める結果となりました。

その結果、1950年代での日本ではデュルケームの「自殺論」での

■利己的自殺(自己本位的自殺)
過度の孤独感や焦燥感などにより個人が集団との結びつきが弱まることによって起こる自殺の形態。個人主義の拡大に伴って増大してきたものとしている。

という状態が急激に深刻化し、若者を中心に自殺者が急増する事態となったのです。

1990年代後半の日本の自殺者増加はアノミー的自殺

では、1990年代後半から2000年代の日本の自殺者増加の要因は一体何でしょうか。

私はこの時期の自殺者数の増加は、倒産や失業問題などの経済的理由による自殺だけではなく、アノミー的自殺という側面も大きかったのではないかと考えています。

自殺者数が急増し年間3万人を超えていた1990年代後半から2000年代までの日本で最も特徴的な文化的現象は、ヤマンバ・汚ギャル・ルーズソックス・援助交際などのコギャル文化や金髪・茶髪などのギャル文化の隆盛です。

ギャルのカリスマだったayuこと浜崎あゆみがデビューしたのが1998年。

国民的アイドルグループだったモーニング娘。がデビューしたのもこの1998年です。

街中には頭の湧いた様なギャルが溢れ、キャバ嬢の様にケバケバしいメイクや髪色のアイドルや女性芸能人達が人気を席捲する。

1990年代後半から2000年代までの当時の日本は、まさに世の中のモラルや家父長制的な規範などが崩壊した時代でした。

デュルケームの「自殺論」でのアノミー的自殺の定義は以下の通り、社会的規則・規制が薄れた社会状態において人々が虚無感を抱き自殺へと至るというものです。

■アノミー的自殺
社会的規則・規制がない状態において起こる自殺の形態。集団・社会の規範が緩み、より多くの自由が獲得された結果、膨れ上がる自分の欲望を果てしなく追求し続け、実現できないことに幻滅し虚無感を抱き自殺へ至るものである。

反社会規範的なギャル文化が席捲した1990年代後半から2000年代までの日本は、まさにこのアノミー的自殺が生じやすい土壌だったのです。

1998年の自殺率急上昇は中高生年代の子供を持つ50代前後の年齢層で発生したので、失業などで家庭内での父親の権威が失墜したことに加えて、娘がヤマンバ化し「はあ?うぜぇ」などの暴言を吐かれるようになったことの絶望が追い打ちとなり自殺を生んだのでしょう。

2000年前後の自殺率上昇の主要因はアノミーである証拠

1990年代後半から2000年代の自殺者増加の主要因は不景気と失業率の上昇ではなく、むしろガングロ・コギャル文化などを典型とするモラル破壊と家父長制的な規範の崩壊というアノミー現象であるというこの考察には、決定的な統計的証拠があります。

それはずばり、10代の若い女性の処女率と自殺率の負の相関関係(ヤリマンギャル率と自殺率の正の相関)です。

以下は、国立社会保障・人口問題研究所による出生動向基本調査に基づく、1987年から2015年までの10代後半・20代前半・20代後半・30代前半の独身女性の性行為未経験率の推移のグラフです。


参照:全般的に未体験率増加へ…独身者の性行為体験済み率をグラフ化してみる – ガベージニュース

この統計で注目するべきは10代後半の若い女性の処女率の推移であり、1990年代の後半あたりから処女率が顕著に減少し、そして2000年代半ば頃を底に、2010年から増加に転じた状況が分かります。

この10代後半女性の処女率の推移が、以下のグラフでの1990年代から2010年代までの自殺率の推移と完全な負の相関を成しているのです。


参照:自殺者数の推移 – 厚生労働省

1997年代終盤に10代後半女性の処女率の急減と共に自殺率が上昇し、そして2000年代を通して処女率は低位で推移し自殺率は高止まり続ける。そして処女率が底を打ち2010年から上昇に転じたことに伴い自殺率も減少に転じ始める。

完璧な負の相関が成立している訳です。

リーマンショックと震災不況では自殺率は上昇していない

この様に1990年代後半から2000年代までの日本での自殺者増加は、単純に不況の影響だけでなく「アノミー的自殺」が生じていた結果であるというのが私の分析です。

この分析を裏付ける証拠として、実際にリーマンショックによる派遣切りや震災不況などで失業問題が2000年代半ばよりも遙かに深刻化した2009年から2011年のどん底の3年間においても、自殺者数は増加することなく逆に減少に転じています。


参照:完全失業率の推移 – 朝日新聞デジタル


参照:自殺者数の推移 – 厚生労働省

つまり自殺というのは単純に景気が悪化したり、失業率が上昇したりなどすれば増加する訳ではないのです。(もちろんこれらの経済的要因も自殺者数を決定する一要素ではありますが、それが全てではありません。)

※この失業と自殺の因果関係については、以下の論文においても直接的要因としてはやや関連性が薄いと疑問視されています。

失業は精神疾患や生活苦・多重債務など自殺と関係の深い様々な要因を誘発してはいるものの「過労→うつ病→自殺」や「事業不振 負債→家庭の不和→自殺」のような主要経路の一部を形成しているわけではなく、直接自殺の原因と認められた事例は全体の3%にすぎなかった。(P29より抜粋)

そして年間の自殺者数が3万人を割った震災後の日本は、失業率が低下したことのみならず、口では「大人に反抗」と言いながらほぼ全員が黒髪で軍服の様な衣装を着て集団的パフォーマンスをする欅坂46が人気を得るなど、個性重視とモラル崩壊の時代だった2000年前後よりアノミー的自殺が生じ難い時代の空気が続いていると言えます。


無個性で集団的なアイドルグループである欅坂46(“カリスマ”平手友梨奈の卒業で欅坂というグループ自体がアノミー化しそうではあるが…)

戦争や国会的危機は社会の統合度を高め自殺を抑制する

デュルケームの言葉に「戦争は自殺の増加を抑制する」というものがあります。

デュルケームは社会的要因による自殺の増加を社会の統合度(一体感)が低下した状況で発生する現象と分析していました。

そのため、「戦争や国家的危機は社会の統合度を高め自殺を抑制する」というのが彼の主張でした。

この主張を裏付ける様に、実際に第二次世界大戦前後の1940年代において日本を含む各国の自殺率は減少し、推移グラフに谷を形成しています。


参照:主要国の自殺率長期推移(1901~)- 社会実情データ図録

戦火に見舞われて現在の日本以上に経済が混乱を極め、食うにも困る貧困の蔓延していた1940年代において、物質的・経済的に豊かになった戦後よりも遙かに自殺率は低かったのです。

また、震災翌年の2012年において完全失業率が4.3%だったのにも関わらず、完全失業率3.9%の2007年と比較し自殺者数が年間約1万人減少したことも、未曽有の震災と言う国家的危機から生じた社会的統合意識の高まりにより自殺が抑制されたためと考えられます。

参照:完全失業率と有効求人倍率の推移 – 総務省統計局


2011年末に発表された今年の漢字は「絆」

新型コロナの危機が社会の統合度を高め自殺を抑制する

ここでこの記事の主題に戻ります。

新型コロナウイルス自粛による経済的影響と不況で自殺者数は増加するのか?

私の予測はNOです。

新型コロナという一種戦争の様な危機が社会の統合度(一体感)を高めて自殺を抑制する結果、倒産や失業などの悪影響があったとしても日本の自殺者は増加しないし、さらに自殺者が減少する可能性すらも高いというのが私の予想です。

新型コロナウイルスによって大量の市民が犠牲になった欧米諸国の都市部は地獄絵図の様な状態となっており、その情報が連日テレビやネットニュースなどのメディアから絨毯爆撃の様に国民に浴びせられ続ける。

新型コロナウイルスとの戦いは、集団心理的には一種の戦争のような状況を呈しています。

デュルケームの「自殺論」によれば、この様な危機的状況においては社会の心理的な結合度やモラルが上昇するために、自殺率は低下する傾向があるのです。

2020年8月追記:2020年1月~7月の自殺者数は過去40年で最少

この様に、新型コロナウイルスの影響により自殺者は減少すると私は予測していましたが、では現実のデータはどの様になっているでしょうか。

以下は警視庁の自殺者数の統計データです。

これらのデータを比較することで新型コロナウイルスが自殺率に与える影響を検証できます。

警視庁の統計によれば2019年の自殺者数は20,169人。

1980年に警視庁で統計を取り始めて以降、過去最小の自殺者数・自殺率でした。

その非常に自殺者数の少なった2019年度(令和元年度)の1月から7月までの自殺者数(参照:令和元年の月別自殺者数)は以下の通り。

1月 1,684人
2月 1,615人
3月 1,856人
4月 1,814人
5月 1,853人
6月 1,640人
7月 1,793人

一方で以下が2020年の1月から7月までの自殺者数。

1月 1,680人
2月 1,450人
3月 1,746人
4月 1,493人
5月 1,569人
6月 1,559人
7月 1,818人

1月は前年度とほぼ差がなく、ダイヤモンドプリンセス号の集団感染などで新型コロナウイルスへの警戒が高まった2月・3月の自殺者は前年からさらに月間100人以上減少。緊急事態宣言でさらに自粛が強化された4月~5月には月間300人以上も激減。翌月の6月も月間100人以上の減少。

自粛解除で経済活動がほぼ正常通りに戻った7月の自殺者数は前年と同水準に戻ったものの、このまま行けば2020年の年間の自殺者数は過去40年間で最少を更新し、史上初めて2万人を割るペースです。

戦争や社会的危機は社会の統合度を高め自殺を抑制するという「自殺論」におけるデュルケームの主張は、新型コロナウイルスの脅威に見舞われた現在の日本でも実証されていると言えるでしょう。

第二波・第三波の来襲で今後数年の自殺率は抑えられるのではないか

この様に2020年5月時点では過去40年間で最少を更新するペースで低く抑えられている自殺率ですが、今後はどのように推移するでしょうか?

過去の事例から未来を予測するため、今回のコロナパンデミックと同様に危機が日本を襲った東日本大震災時のデータを参考に見ていきます。

東日本大震災の被災地では震災の2年後に自殺率が増加した

以下は、2009年から2018年までの宮城県沿岸地域の自治体の自殺率の推移グラフです。


参照:震災「復興期」に高い自殺率 「幻滅期」後の16年以降:朝日新聞デジタル

2009年以降、全国的に自殺率は減少を続けましたが、震災のあった2011年と2012年の被災地ではそれ以上のペースで自殺率が激減しています。

デュルケームの「自殺論」での主張通り、社会的危機が市民の結束を高め自殺抑止効果が発現したと言えます。

しかし、東北沿岸を舞台にしたNHKの朝ドラ「あまちゃん」(放送期間:2013年4月7日~2013年9月29日)が放送され国民的ブームとなるなど被災地が本格的に震災から立ち直り始めた2013年に、自殺率は跳ね上がり全国平均を上回ります。


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これは地域の住人の全員が大きな傷を受けた震災からの復興が本格化する中で、「自分だけ周囲から取り残された」と疎外感と孤独感を深めて絶望する被災者が多く発生したことが理由と考えられます。

災害の後は「ハネムーン期」と呼ばれ、連帯感が強まるなどして自殺が減る。次に、被災者の立ち直り状況の個人差が広がる「幻滅期」となり、自殺が増えることは、過去の災害の先行研究から知られていた。

大類さんが注目するのはその後の16年以降の動き。この時期は、多くの自治体で無償で住める仮設住宅の提供が終わり、被災者は住宅を再建したり、家賃がかかる復興住宅に移ったりした。「経済的支援が終わり、生きづらさを抱える人の精神的負担が重くなった可能性がある。仮設団地でできたコミュニティーが分断されたことも大きい」とみる。

参照:震災「復興期」に高い自殺率 「幻滅期」後の16年以降:朝日新聞デジタル

同様に、新型コロナウイルスにより抑制された自殺者数が今後増加に転じるとすれば、それが発生するのは、コロナが終息して完全に自粛が解除され日常を取り戻し始める時期であると予想されます。

第二波・第三波と長期に渡って市民を襲うコロナの脅威

しかし、残念ながら新型コロナウイルスが完全に終息して日常を取り戻すことはおそらく当分の間ありません。

以下のイギリスBBCのニュース記事の様に、新型コロナウイルスとの戦いは最低でも今後1年は続くと予測され、ケースによっては2年以上に及ぶ長期化の可能性も危惧されています。

頼みの綱のワクチン開発はどうなっているのか?ということですが、以下のニュース記事の様に新型コロナウイルスは突然変異を起こすことが報告されているため、仮に有効なワクチンが開発されたとしても、その効果が持続する保証はありません。

この様な状況で、大型クルーズ客船ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルスの集団感染を担当したウイルス感染症のスペシャリストである神戸大学の岩田教授も「おそらく事態は数年掛かりの長期戦になる」と予想しています。

また、アメリカのハーバード大学でも「新型コロナに伴う外出自粛は繰り返し2022年まで行われる」という予測を発表しています。

この様に多くの専門家・研究機関が新型コロナの終息に対して悲観的に見通しを持っており、少なくとも現在の様な状態が2年後の2022年まで続く可能性が危惧されています。

危機的状況は今後数年続き自殺は抑制され続ける可能性が高い

この様に新型コロナウイルスがもたらす危機的状況は今後数年は続くため、デュルケームの「自殺論」の理論から、自殺は今後も抑制され続ける可能性が高いと私は予測しています。

自殺者の減少が続くのであれば喜ばしいことですが、しかし反面、コロナ禍の長期化による経済的なダメージは甚大です。

2025年には日本人は現在よりも遙かに貧しくなっているでしょう。

物質的には非常に豊かであった平成の時代には想像もできない様な貧困問題が日本を襲うかもしれません。

1940年代の戦中・戦後の焼け野原の日本で、食べる物にも困る様な極度の貧困の中で自殺率が抑制されたことと同様の現象が今後の日本でも起こるのです。

以下はたまたまではありますが、コロナなんて名前すら知らなかった2017年時点で2020年~2025年にかけて日本が破滅すると予言していたブログ記事です。今後の日本についての私の予想を知りたい方は、是非こちらもお読みください。

2020年10月追記:第二波も死者数は増えずコロナは実質終焉。自殺者は増加

6月以降の日本では都市部を中心に春先の第一波と比較し致死率が激減し、東京では非常にハイリスクと言われる60代以上の高齢者の感染致死率ですら5.1%→0.5%と新型コロナウイルスはほぼただの風邪同然の脅威になっています。

https://twitter.com/j_sato/status/1308662213989654528

新型コロナの免疫は当初の多くの専門家の予測よりも遙かに早く獲得され、都市封鎖など全くせずに1日の死者は10人以下程度と収束。

生命を脅かす感染症としてのコロナの脅威は実質終焉したと言ってしまっていいでしょう。

この様な状況で6月まで非常事態での危機意識の高まりにより抑制されてた自殺者数は増加に転じています。

7月までは史上最少ペースで推移していた2020年度の自殺者数は、8月には前年比約250人の増加、9月には前年比約150人の増加。

1月 1,680人(前年:1,684人)
2月 1,450人(前年:1,615人)
3月 1,746人(前年:1,856人)
4月 1,493人(前年:1,814人)
5月 1,569人(前年:1,853人)
6月 1,559人(前年:1,640人)
7月 1,818人(前年:1,793人)
8月 1,854人(前年:1,603人)
9月 1,805人(前年:1,662人)

新型コロナが実質終焉し、社会的危機という意識が薄れたことで自殺者数が跳ね上がる、という東日本大震災2年後の被災地と同様の現象が発生しているといえます。

新型コロナ問題の想定以上の早期終息により、2020年度の自殺者数は2万人を割ることなく、前年度(平成31年・令和元年度)と同程度の自殺者数となるペースになりました。

ただし、自殺者数の増加の幅は小さく平成29年度(2017年度)の8月(1,901人)・9月(1,882年)と比較しても月間の自殺者数は低水準となっており、以下の記事などで予想されて様な自殺者数が10万人以上増加という事態にはなっていません。

デュルケームの自殺論の通り、経済的問題だけでは自殺者数は増加しない、社会的危機の状況では自殺者数が抑制されるという分析の正しさは改めて実証されたと言えます。


自殺論 (中公文庫)

以上、「新型コロナ自粛の経済的影響と不況では自殺者は増加しない」の記事でした。

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